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コラム

広すぎない“手の届く終の棲家”へ 小さくても快適なコンパクト平屋設計の秘訣

2025.08.26
終の棲家

老後の暮らしを「家」から考える

人生100年時代。医療が発達し、60代からの暮らしはまだまだ長い旅路の入口にすぎません。

子どもが独立し、夫婦ふたりの生活が始まると、それまで当たり前だった家の広さが、突然「負担」に感じられることがあります。

「掃除してもほとんど使わない部屋がある」

「階段の上り下りがきつくなってきた」

「光熱費や税金がもったいない」

こうした悩みは、多くのシニア世代が抱える現実です。

だからこそ「終の棲家」を考えるときに重視すべきは、“大きさ”や“豪華さ”ではなく、無理なく快適に、そして長く暮らせる住まいです。

本稿では、コンパクト平屋という選択肢を通じて、20~30年先まで見据えた住まいづくりの考え方と、無駄なく必要な広さで高性能に暮らすための設計術を解説します。

平屋で叶える安心シニアライフ

50代からの『終の棲家』完全ガイド

 

 

1. なぜ「コンパクト平屋」が終の棲家に最適なのか

 

かつて日本では「大きな家=豊かさの象徴」でした。しかし少子高齢化が進む現在、その価値観は大きく変わりつつあります。

 

夫婦ふたりにちょうどいいサイズ

子どもが巣立った後は、夫婦ふたりで必要な部屋数は限られます。大きな家に住み続けると、「使わない空間のために光熱費や固定資産税を払い続ける」という非効率が生まれます。

和歌山で選ばれる小さい平屋-シニア世代に最適な省エネ&高性能住宅

 

掃除・管理の負担を減らす

家は広ければ広いほど掃除やメンテナンスが大変です。特に高齢になると、ちょっとした段差や階段が事故の原因になりかねません。コンパクトな平屋なら、一目で全体を把握できる安心感と、掃除や管理のしやすさが手に入ります。

 

経済性という大きなメリット

延床面積を小さくすれば、建築費用はもちろん、冷暖房効率が高まり光熱費も抑えられます。固定資産税などの税金も軽減され、老後の家計に優しい住まいとなります。

 

 

2. 20~30年先を見据える長期視点

 

家を建てるとき、多くの人は「今の暮らしやすさ」だけを考えがちです。しかし本当に大切なのは、20年後、30年後の自分の暮らしを想像することです。

 

年齢を重ねることで変わる生活

  • 70代:階段の昇降が難しくなり、2階を使わなくなる

  • 80代:掃除や草刈りなど家の維持が大きな負担に

  • 90代:介護や見守りが必要になり、生活空間は寝室と水回り中心に

「今は大丈夫だから」と先送りしていると、将来の生活にフィットしない家に住み続けることになります。結果的にリフォームや転居を余儀なくされ、費用も心身の負担も大きくなってしまうのです。

 

長期視点がもたらす安心

逆に、今から将来を見据えた設計をすれば、歳を重ねても安心して暮らし続けられます。

  • 動線を短くして、体への負担を減らす

  • バリアフリー設計で転倒リスクを最小限に

  • 高断熱・高気密で冷暖房費を抑え、健康にも家計にも優しい

これらはすべて、「未来の自分を助ける投資」なのです。

 

 

3. 必要十分な広さとは?コンパクトの物差し

 

「小さい家」と聞くと「窮屈そう」と思う方もいるでしょう。しかし実際には、夫婦ふたり暮らしで必要な面積は延床15~24坪程度。LDK、寝室、水回りがあれば、快適な暮らしに十分です。

 

間取りの考え方

  • LDK:14~16畳

  • 寝室:6~8畳

  • 水回り:洗面・浴室・トイレを回遊性高く配置

  • 収納:分散ではなく集約(WIC・パントリー)

 

空間を広く感じさせる工夫

コンパクトでも広々と感じるには、「視線の抜け」がポイントです。リビングの先に大きな窓を設けて庭や外の景色につなげれば、空間が実際より広く感じられます。また、勾配天井や吹き抜けを部分的に採用すれば、体感容積が増して解放感が生まれます。

 

 

4. 高性能が暮らしを変える

 

小さな平屋にする最大の強みは、性能を底上げしやすいことです。断熱や窓に投資しても、施工面積が小さいためコストが抑えられ、効果は非常に大きくなります。

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断熱・気密

UA値0.46以下(断熱等級6相当)を目指せば、夏も冬も快適。高気密にすることで冷暖房効率も高まり、電気代を抑えられます。

国土交通省:住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設

 

窓計画

熱の出入り口は窓です。南面は大きく、東西は小さめに、北面は必要最小限に。日射取得と遮蔽をバランスさせれば、自然光と通風を最大限に活かせます。

 

省エネ設備

エコキュートや高効率エアコンを導入すれば、毎月の光熱費が大幅に削減できます。さらに太陽光+蓄電池を組み合わせれば、停電時も安心。小さな家ほど災害に強いのです。

 

 

5. コストの最適化:初期費用と生涯費用

 

家づくりで大切なのは、「いくらで建てるか」よりも「いくらで住み続けられるか」です。小さな平屋は建築費を抑えやすいだけでなく、光熱費や維持費、税金まで含めた生涯コストを最小化できる家なのです。

和歌山で平屋を建てるならいくら?価格相場・費用の内訳・補助金活用まで徹底解説!

 

初期費用

延床20坪の平屋であれば、建築費は一般的な2階建てよりも500~700万円安くなるケースもあります。形状をシンプルにすれば、さらにコストを削減できます。

 

ランニングコスト

小さい家は冷暖房費が少なく済みます。性能を上げれば、光熱費は従来より20~30%削減可能です。またガルバリウム鋼板の屋根など、メンテナンス周期の長い素材を選ぶことで、10年後、20年後にかかる修繕費を大幅に抑えられます。

 

 

6. 一般的な事例に学ぶ:15坪平屋の暮らし

 

延床15坪前後の平屋に建て替えると、暮らしは大きく変わります。

たとえば、二階建て4LDKに住み続けている家庭では「子ども部屋が空き部屋となり、2階は物置状態」「掃除の負担や冷暖房費だけがかさむ」といったケースがよく見られます。

これを夫婦ふたりに合わせた15坪前後の平屋に建て替えると、生活空間がコンパクトにまとまり、エアコン1台で家全体が快適になるほど効率的になります。掃除にかかる時間も短縮され、日々の負担が軽減されます。

さらに延床を小さくすることで建築費を抑えられるだけでなく、光熱費は年間で10〜15%前後削減できる例もあり、将来の生活に安心感を与えてくれます。

つまり「必要な広さに絞った平屋」は、夫婦ふたり暮らしにちょうどよく、経済性と快適性の両立を実現する暮らし方の一例といえるでしょう。

 

 

7. 将来を支えるバリアフリー設計

 

終の棲家を考えるうえで欠かせないのが、バリアフリー設計です。元気なうちは段差や狭い廊下も気にならないかもしれません。しかし、年齢を重ねるにつれて「ちょっとした段差につまずく」「夜中のトイレ移動が不安」といったリスクは確実に増えていきます。最初からバリアフリーを意識した設計にしておけば、安心はぐんと長続きします。

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段差をなくす

もっとも基本となるのは床の段差をなくすことです。玄関の上がり框、浴室の出入口、ベランダへの敷居──こうした数センチの差が転倒事故につながります。初めからフラットフロアにしておけば、将来車いすを使うことになってもストレスなく移動できます。

 

廊下や出入口の幅を広くとる

廊下の幅は90cm以上、理想は100cm。出入口は有効幅80cm以上を確保し、引き戸を採用すると開け閉めの負担が少なく、介助スペースも取りやすくなります。少し余裕を持たせておくだけで、将来の暮らしやすさが大きく変わります。

 

水まわりを寝室の近くに

高齢期になると、夜間のトイレや入浴時の移動が負担になります。寝室のすぐ隣にトイレや洗面・浴室を配置すれば、移動距離が短く、事故のリスクも減ります。日常生活の快適さと安心感がぐっと高まります。

 

手すりや下地の準備

手すりは必要になったときに後付けできますが、そのためには壁の内部にあらかじめ下地を入れておくことが大切です。廊下や階段(もし計画に含まれるなら)、トイレや浴室の壁に下地を仕込んでおけば、いざという時すぐに取り付け可能です。

 

明かりと安全

夜間の事故を防ぐには、足元を照らす常夜灯や人感センサー付き照明が効果的です。ほんのりした明かりが自動で点くだけで、安心して移動できます。

 

 

8. 長期視点で避けたい“落とし穴”

 

小さな平屋をつくる際に注意すべき点もあります。

  • 廊下が多いと実質の居住スペースが減る

  • 窓を多く取りすぎると暑さ寒さの原因に

  • 収納を軽視するとモノであふれて狭く感じる

  • 内装ばかりに予算をかけ、性能を犠牲にする

これらを避けるためには、「性能に投資し、間取りはシンプルに」が鉄則です。

 

 

9. 今日からできる準備

 

家づくりは「土地探し」や「間取り検討」から始まると思いがちですが、実はもっと手前にできる準備があります。まずは今の暮らしを客観的に見直すことです。これが新しい家の設計に直結します。

 

生活動線を記録する

1週間ほど、実際に自宅でどう動いているかを観察してみましょう。

「朝起きてからトイレや洗面所まで何歩かかるか」「料理や洗濯でどれくらい家の中を移動しているか」を書き出すと、無駄な動きや不便な動線が見えてきます。これを整理すると、将来の間取りで最優先すべきポイントが明確になります。

 

持ち物の量を把握する

次に、どれくらいの荷物があるかを数えてみましょう。衣類、食器、本、趣味の道具……。思っている以上にモノは多いものです。実際に数や体積を測れば、必要な収納量が具体的にわかります。「大きな収納を1か所に集約した方が便利」という判断にもつながります。

 

光熱費を整理する

最後に、毎月の光熱費を見直してみましょう。電気・ガス・水道の請求書を並べて合計すると、1年間でかなりの金額になっていることに驚くはずです。そこから「高断熱・高気密の家にすればどれくらい減らせるか」を試算すれば、性能に投資する価値が実感できます。

 

 

まとめ:大きさより“暮らしやすさ”を

 

終の棲家づくりは、広さを競うことではなく、どの空間が生活の質を確実に上げるかを見極める作業です。答えはシンプル。まずは「無駄を省いた必要十分な広さ」を定め、そこに「長期にわたり安心できる性能」を組み込むこと。これが、20〜30年を見据えた最も賢い選択です。

小さく整えた平屋は、毎日の動線を短くし、掃除や維持の手間を軽減します。冷暖房効率が上がることで、光熱費は自然に抑えられます。浮いた建築費や余剰スペースを、**断熱・気密・窓・換気といった“見えない品質”**に投資すれば、季節を問わず快適さが持続し、修繕や光熱費に追われない家計を実現できます。さらに、段差のない動線や引き戸、寝室に近い水回りといったバリアフリー設計を最初から組み込めば、体力や暮らし方が変わっても安心です。

結局のところ、広さや装飾にお金をかけるよりも、暮らしのしやすさと維持費の安さに直結する部分へ投資する方が、毎日の満足度も将来の安心感も大きくなります。

「小さく作って、いい性能。」

それは単なる住まいの哲学ではなく、コストを抑えながら生活をシンプルにし、30年先まで安心して暮らせる最短ルートなのです。

 

 

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